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人類はその長い歴史の中で,様々な危険から自分たちの生命と財産を守るための生活空間を構築してきた。飢餓の恐怖から脱出したかに見える現代人はさらに一層の生活空間の快適化を求めているが,同時に現代文明の発達に伴い生成された副産物の逆作用の危険に直面してもいる。
日本の現状に目を向けるならば,国土の保全,都市の開発,住居の建築と維持管理,交通の計画と管理,衛生と健康の改善と管理など,生活空間の安全化と快適化に関与する経済活動や就業人口がきわめて膨大なものであり,私たちが,供給できる資金や人的エネルギーの相当大きな割合をそれらに振り向けていることは間違いない。しかしながら,残念なことに,私たちはそうした資金や人的エネルギーの投下量に見合った「安心」,「快適さ」,「満足感」を獲得しているとは言いにくい。複雑化し,高度化しつつある現代社会は専門家たちの専門領域を越えた協働を不可欠のものとしているし,そうした協働の基盤となる複合領域的な性格の知識,スキル,意志決定力をこれらの専門家たちが具備することが必要とされてきている。
例えば,物質的な自然の状況に加え,歴史,文化,産業,住民の健康,自治体の財政など地域社会の全体構造をふまえてもっとも望ましい開発計画を策定し,実行しうる土木技術者,といった存在はその一例であろう。
生活空間コースは,土木工学,衛生学,公共システムに関する経済学・経営学,地域・都市と人口・労働に関する社会学・経済学などの異なる専門領域の専門家の交流と協働により,安心,安全,快適な生活空間の創造に貢献しうる知識とスキルと決断力を持つ人材の育成を目指している。
=東京医科歯科大学,東京工業大学,一橋大学